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リストマーク 竹井英文さんの主要論文集が刊行されました 

2022年08月29日 ()
同じ内容ですが、こちらへも書いておきます。

2208263.jpeg『杉山城問題と戦国期東国城郭』 竹井英文著
          戎光祥出版 2022年 9000円

話題の新刊論文集が届いていた。本書は、杉山城問題の中に投入した衝撃の論文を含めて、竹井英文さんのこれまでの杉山城問題と城郭に関する主要な論文が収録されている。これまでも折々に論文をご恵贈いただいていたので、本書収録論文のいくつかはすでに拝読させていただいているが、改めて全体を通読して、この問題の流れと周辺城郭の話題について、竹井さんならではの着眼点を再確認したいと思う。

竹井英文:序にかえて「基礎研究なくして研究の発展はない」
[2022.08.29(Mon) 21:05] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 北条義時本を選ぶなら 『鎌倉殿の13人』の参考書 

2022年01月30日 ()
2201141.jpeg『史伝 北条義時』 山本みなみ著
           小学館 2021年 1300円

2021年末には北条義時本も大方出揃い、翌2022年の年明けからNHK大河『鎌倉殿の13人』がスタートした。義時の名を冠した書籍を持っていなかったので、まずは新進気鋭の研究者である山本みなみ氏の本書から読んでみたのでその感想を書いておこう。

多くの義時本の中から、最初に本書を手にできたのはおそらく幸運だったのだろう。どこでそう感じたかと言えば、根拠となる史料を挙げて踏み込んだ記述をしてあり、一般向けの概説本でありながら高い満足感を得られたからだ。記述の流れは、研究史の紹介→現時点での理解→新史料紹介→新たな解釈という手順を取っているのも論理的で好感を持った。これまでに耳にしていた内容は、これこれの研究成果の積み重ねで成り立っていたのかと理解できたし、さらに本書で紹介される新史料によって補足されたり新たな解釈の提案がされることもあり、知的な楽しさを味わうことができた。最終章で改めて同時代から近代までの義時評価の変遷を史料を挙げて流れを追って記述されていたが、これまで一般書ではあまり見たことがない構成ではないだろうか。

強いて希望を付け加えるならば、義時あるいは北条氏を中心にした系図(あるいは相関図)、および略年表などが掲載されていれば、本書だけでなく他書を読むときにも本書を手に取る機会が増えてより参考書としての使い勝手が高まったのではないかと感じた。それはともかくとして、とにかくとても良い本でおすすめの一冊だ。
[2022.01.30(Sun) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 疎かにできないお城と宗教・信仰との関係 

2021年09月11日 ()
2109111.jpeg『城と聖地ー信仰の場の政治性』 中世学研究会編
            高志書院 2020年 3000円

ここ何年かの間に、地元の城郭を見ていく際にも宗教的な視点抜きには先へ進めないことを強く感じさせられる機会が増えている。規模の違いや濃い薄いはあるにしても、城には何かしら宗教や信仰との関係が漂っていて、本書で各研究者が取り上げている規模のものではないが、身の回りの城館を歩いて気づく小さな痕跡もなかなか疎かにできないことを感じる。元々からある宗教的な基盤を吸収する形で城郭が発展していったのか、城郭が後に宗教的な求心性を帯びていったのかなど、本書を参考に地元の城郭と信仰・宗教・聖地についてのヒントを探してみたいと思う。
[2021.09.11(Sat) 08:35] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 伊東潤著『歴史作家の城めぐり』 

2021年08月11日 ()
2108112.jpeg『歴史作家の城めぐり<増補改訂版>』 伊東潤著
          幻冬舎新書 2021年 1300円

お馴染みの伊東潤さんの城めぐり案内書。関東7県+山梨、長野、静岡と地域的には限られているが、自分にとってはちょうど良い範囲だ。まだ読んでいないが、ちなみに茨城県内では、逆井城、額田城、小幡城、石神城の4城が紹介されている。
[2021.08.11(Wed) 07:32] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 今春一推しの書『図説 享徳の乱』 

2021年03月20日 ()
こちらでもご紹介。

2103121.jpg『図説 享徳の乱』 黒田基樹著 戎光祥出版
              2021年 1800円

 この春、中世史の本の中で最も期待するものが届いた。数多の戦国武将の中で一推しの足利成氏が享徳3年(1454)に起こしてその後足掛け29年に及ぶ「享徳の乱」の戦乱について、新資料・新解釈が提示されているということで期待が膨らむ。ただ、読み始めてさっそく疑問を感じたのは、宝徳2年(1450)の江の島合戦をほぼスルーしていること。前哨戦としてこの合戦を位置付けなければ享徳の乱の勃発を説明できないと思っているのでこの構成には不満を感じた。と思ってあとがきを読むと「それらについては拙著『長尾景仲』、拙編『足利持氏とその時代』、『足利成氏とその時代』を参照されたい」とのこと。はいはいすでに参照しておりまする(完全に囲い込まれていたわ)。

『長尾景仲』 黒田基樹著 戎光祥出版 2015年 2800円
『足利成氏とその時代』 黒田基樹編著 戎光祥出版 2018年3800円

 NHK大河ドラマでは全く扱われていない時代なので一般の知名度は低いが、登場人物は多いし各人個性的だし関係するご当地も多いし、魅力的なドラマになるのでは無いかと思うのだが、それはまだ少し先のことか。
[2021.03.20(Sat) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 古墳研究の一つの到達点か 

2021年02月25日 ()
別のところで紹介したが内容がおもしろかったのでこちらにも再掲しておく。

2012261.jpg『前方後円墳とはなにか』 広瀬和雄著 中公叢書
                 2019年 2600円

昨年末の12月13日に大洗で開催された磯浜古墳群 国史跡指定記念シンポジウム『磯浜古墳群へ続く道』で基調講演をされた、広瀬和雄氏の著書。講演の動画が聞き応えあったので2019年に出た本書にも手が出た。語りたいことがたくさんあるといった講演だったが、本書もそうで、そことが構成からひしひしと伝わってくる。表紙をめくり扉をめくると「はじめに」が6ページ、目次の後に「本書の概要」が5ページ、中扉をめくると「序章」が15ページ、そこからが漸く本文で、本文のあとに「おわりに」が4ページ、「あとがき」が2ページとなっている。
自分の様な古墳入門者がいきなり読むには470ページを超えるこの本は歯応えあり過ぎだった。ただ、最初に著者も書いているが、多くの事例研究から演繹的に解を導きたいという執筆意図のため分厚くなっている様なので、各項目から事例部分を適当に飛ばし読みしても全体のストーリーはなんとか追える。
3世紀中頃から7世紀初めまでの350年間に全国で5200基作られた前方後円墳は、奈良盆地から河内にかけての大和川流域を中心として徐々に全国へ波及しわけではなく、出現も終焉も一気呵成だった。そして、一貫して「共通性」と「階層性」を見せるためのモニュメントとして、350年間これといった進化もなく作られ続け、そして作られなくなった、と言うことの様だ。

 →大洗町の磯浜古墳群から古墳研究の最先端を垣間見る
 →YouTube:【磯浜古墳群へ続く道】
[2021.02.25(Thu) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 千葉氏の歴史を概観 本佐倉城講演記録集 

2020年12月22日 ()
以前、知人より頂いていたシンポジウムの報告書ですが紹介するのが遅くなりました。

2004101.jpg本佐倉城跡国史跡指定20周年記念事業講演会 記録集
『敵を阻む城、にぎわう城下』 佐倉市・酒々井町 2020年
〜戦国時代の本佐倉城と千葉氏の歴史〜

市村高男先生の基調講演「室町・戦国期の千葉氏と本佐倉城跡ー地域からの視点で全体を見るー」はたいへんボリュームのある内容で、これだけで千葉氏の歴史を概観できる論文になっている。

一部にだけ配るのではもったいない内容で、一般書籍として市販するべきだと感じる。
[2020.12.22(Tue) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 享徳の乱に始まった戦国時代の終焉 

2020年11月01日 ()
他所にも書いた同じような内容だがこちらでもご紹介しておこう。

2010262.jpg列島の戦国史⑦
『東日本の統合と織豊政権』 竹井英文著
           吉川弘文館 2020年 2500円

ヤブレンジャーの若きアイドル竹井英文先生の新著。ご専門の文献史学の立場から古文書を証拠にしての論考には説得力と臨場感があるだけでなく、文章が読みやすく分かりやすいという親しみやすさが加わり、いまや売れっ子歴史学者に名を連ねられ、祝着至極。

さて、本書はどうかというと、ご本人もあとがきに書かれているが、こういう通史物は事実の羅列に終始し退屈になりがちで、確かに最初の2章は目まぐるしく入れ替わる勢力争いの流れに着いていけずにいたが、有名武将たちの気持ちの表れたユーモラスな箇所を古文書から抜き出しているのは竹井氏らしい工夫だと感じられた。例えば、
・武田信玄に蒲原城をを落とされた北条氏政「余りに恐怖」
・上杉謙信に援護要請を無視された北条氏康の恨み節「御加勢一途にこれ無き故、かくのごときの儀、是非無く候」
・自分の密書を人前で回覧した太田三楽斎に激怒する謙信「美濃守の事は天罰者」
・信玄と同盟を結んだ氏政の行動に怒った謙信は繰り返し「馬鹿」と罵倒
・信玄の行動に怒った信長は「前代未聞の無道者」「侍の義理を知らず」と批判
・信玄と信長の同盟破綻を知った謙信「信玄運の極み」「信玄蜂の巣に手を指し」「信玄に汗をかかするべく候」
・佐竹方にも勝てない氏政が自分と戦うなど「腹筋に候」と侮る謙信
・謙信は信玄を追い詰めたらその足で氏政を「蹴倒す」と豪語
・謙信は兵糧の搬入に失敗した家臣を「佐藤ばかもの」と激怒
などなど、歴史ドラマではかっこいいヒーローといえども人の子、怒ったり笑ったりぼやいたりしている姿が目に浮かんでくる。
その後の3章は社会構造やインフラや経済活動に関する内容で面白くなったので引き続き読み進めそうだ。
[2020.11.01(Sun) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 享徳の乱 メジャーになるのはいつ? 

2020年10月02日 ()
2009081.jpg列島の戦国史①
『享徳の乱と戦国時代』 久保健一郎著
           吉川弘文館 2020年 2500円

夏休みの予定に、古河、下野国南部(小山)、武蔵国北部(五十子)を混ぜておいたのは、享徳の乱の主戦場・聖地めぐりをしたかったからなのだが、最近この様な本が出ていたことをつい先日知ってさっそく購入。年初の新刊『太田道灌と長尾景春』のあとがきでの黒田基樹先生の力強い宣言が現す様に、享徳の乱と足利成氏についての研究戦国時代がまもなく幕を開けることは必定。とにかく予習予習。

と書いた途端に、10月5日報道のBS-TBS「にっぽん歴史鑑定 #250」で太田道灌が取り上げられるということが目に飛び込んできた。長尾景春の乱とか、まさしく享徳の乱の時代。放送は見られないが、直後からネットに情報が飛び交いそうで楽しみだ。
[2020.10.02(Fri) 21:14] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 「平将門の乱」について読み始める 

2020年07月11日 ()
2007101.jpg この城は平将門が築城しましたと聞いても、戦国時代よりもかなり前のことなので、可能性を否定はしないが、重要地点であればあるほどその後の時代に再度取り立てられて将門時代の痕跡はわからなくなっていることだろう。ということで、城郭の点からは将門は自分にとってリアリティを感じる存在ではなかったので、これまで断片的でありきたりの将門イメージしかもっていなかった。
 最近ちょっとしたきっかけがあって、もう少し具体的な将門の乱と将門像を知りたいと思って本を読み始めたところへ届いた将門煎餅。というのは逆で、将門について考える機会を与えてくれたのは、この品の送り主で『図説 茨城の城郭』の熱烈な読者の方だ。
 いただいた将門煎餅を食べながら将門の本を読んでいるのだが、人物関係や事件の関連がなかなか頭に入ってこない。そんな折、NHKオンデマンドで『風と雲と虹と』総集編(前編・後編)が見られるようになっているので、これも見ながら本を読んでいる。
 平将門について勉強するきっかけは、将門は平凡な開発領主だったのか?という問いについての答えを得たいからだ。将門の乱は、国衙の占拠や新皇宣言が示すように関東限定とはいえ律令国家を維持してきたシステムが奪取され、貴族社会を恐怖のどん底に落とし込んだ大事件だった。それは、武士の起こりとか、律令制の崩壊とか、荘園の始まりなどの日本史的大問題と直結している。将門の乱が分かりにくいのは、史料が少ないことに加えて、舞台となった地域の当時の地勢、戦国時代の知識をベースにできない様々な社会システム、そしてその大きな変動時期であることなどが絡んでいて、単に事件の経過を追っていくだけではわからないことだらけだからだと思う。
 この機会に何冊か選んだ次のような本を読んで、将門の時代を見ていきたいと思っている。

2007102.jpg岩田選書・地域の中世2
『中世関東の内海世界』 鈴木哲雄著 岩田書院
              2005年 3000円
 今回購入したものではないが、香取の内海論の先駆的研究者が、将門の乱の舞台を水上交通路の視点から記述している論文が含まれている。

2007103.jpg『新訂 将門記』 林陸朗編注 現代思潮社
              2006年 2700円
 「将門記」の現代語対訳本。これはサブテキストとして買っておいた。

2007104.jpg戦争の日本史4
『平将門の乱』 川尻秋生著 吉川弘文館
              2007年 2500円
 若干古い本だが、現在でも将門の乱について手軽に読める、最もよくまとまっている本の一つらしい。最初にこの本をから始めるのがスタンダードかもしれない。

2007105.jpgシリーズ・中世関東武士の研究 第16巻
『常陸平氏』 高橋修編著 戎光祥出版
              2015年 6500円
 巻頭の「総論 常陸平氏成立史研究の現在」は、これまでの常陸平氏についての研究史が手際よくまとめられていて、その導入部分が将門に関わる内容になっている。他の本よりも前に読んで概観し、他の本を読みながら確認し、他の本を読み終わってからまとめ的に読んでみるといいかもしれない。本書も、今回のために購入したものではなかったが、思いがけず良い本を所有していた。

2007106.jpg歴史文化ライブラリー189
『平将門の乱を読み解く』 木村茂光著 吉川弘文館
              2019年 1800円
 今回将門について知りたくなって、最初に手に取ったのがこの本。本書で明らかにしたい5つの論点がプロローグに挙げられているのだが、一族内紛の経過があっさりし過ぎだし、営所が陸奥ともつながる水陸の交通の要所であること、八幡神と道真の登場、王土王民思想の指摘も受領国司への権力集中政策と言い換えられるし、大体は川尻氏の本で述べられているように感じる。ただ、冥界消息については、確かに本書が力を入れた部分だと思われる。ただ、将門の営所があったと言われる坂東市岩井の場所を終始千葉県と勘違いされていたり、筑波周辺の場所の位置関係や方位関係を誤って記述されたりしているのはいただけない。
[2020.07.11(Sat) 07:33] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 特別展図録 『親鸞 ー茨城滞在20年の軌跡ー』 

2020年04月10日 ()
2002274.jpg平成21年度特別展 『親鸞 ー茨城滞在20年の軌跡ー』
             茨城県立歴史館 編集・発行

 配流を許された後の1214年、親鸞は現在の茨城県笠間市稲田へ来る。宇都宮氏がこの地へ勢力を伸ばすきっかけとなった寺院間問題への武力介入は9年前の1205年。親鸞が稲田を離れたのが1235年とすると、その17年後に忍性は小田へやって来ることになる。仏教は苦手だが、この時代の常陸国南部における親鸞や忍性については、宗教的な面だけを見ているわけにはいかないことを感じる。宇都宮氏、笠間氏、八田氏、小田氏と宗教者たちの宗教以外の関係を見るヒントを得られることを期待して古書店で購入した。
[2020.04.10(Fri) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 小山義政の乱 名門氏族ゆえの受け入れ難い何かがあったのか? 

2020年02月15日 ()
1912211.jpg中世武士選書27
『小山氏の盛衰』 松本一夫著 戎光祥出版
              2015年 2600円

 下野の名門氏族小山氏については、あまり馴染みがなかった。最近、鎌倉府、宇都宮氏、笠間氏、小田氏、あたりが気になるので読んでみた。小山犬若丸の乱に呼応するタイミングで起こった小田孝朝の乱だが、結局なんだったのという事件で、鎌倉府の陰謀に嵌められたのではとさえ感じる。宇都宮氏綱は鎌倉府に対して乱を起こしながらもすぐに降伏して、近年得た領地没収で済んだが、小山義政は徹底抗戦で、3回降参して3回裏切って族滅に至った。受け入れ難い降伏条件だったのだろうか。小山周辺の城館の解説を読みながら、サイクリングで1日かけて回ってみたくなった。
[2020.02.15(Sat) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 己の掘った落とし穴に嵌ったのかもしれないけど魅力的な人 

2020年01月15日 ()
1912221.jpg中世武士選書43
『太田道灌と長尾景春』 黒田基樹著 戎光祥出版
                 2019年 2600円

 11月に刊行を知った後、道灌と景春については予習しておいたので飛ばし読みでも流れは追えた。長尾景春の乱は、都鄙合体へ至る享徳の乱後半の流れを作ったが、常に山内上杉顕定との戦争状態を維持したい景春にとって、それは望んでいたのとは違った方向へ行ってしまったはずだ。そう言う意味では、大局を俯瞰し、時代の先を見越している人ではなかったと言える。別の言い方をすれば、自分で掘った落とし穴の場所の記憶があやふやになって自分で嵌ってしまった様な、なんとも憎めない魅力的な人物と言ってもいいだろう。おそらく、緻密で切れすぎる人ではなかったこと、そのことが却って60歳代(説によっては70歳代)まで現役で戦闘を続けながらも、暗殺もされず、また戦でも死ななかった理由の一つなのではないかと考える。古河公方足利成氏も戦では死ななかったが、彼はもう少し緻密な人だったのではないだろうか。
 成氏といえば享徳の乱だが、この乱は成氏による関東管領上杉憲忠誅殺で始まったことになっているが、そもそもの経緯があった中で憲忠は行きがかり上殺された様なもので、反成氏勢力の首魁は扇谷上杉持朝と長尾景仲なのだと思う。特に、持朝のキーパースン度は高い。父足利持氏を殺した上杉憲実への恨みが享徳の乱を戦い続けた成氏の原動力だとする先生もいるが、自分は成氏は恨みで行動した人ではないと感じている。一方で、景春を戦い続けさせたのは上杉顕定への恨みだったのかもしれないなと。ただ、長享の乱終息後一時顕定へ帰参した理由は謎だが。
 12月15日放送のNHKのDJ日本史は太田道灌の巻だった。その中で景春の存在は語られながらも名前は出してもらえなかったのは大変残念だった。もっと名前を売ってもらわなくてはね。応仁の乱に先駆けること30年、関東の戦国時代の幕開けとなった永享-享徳-長享-永正の時代は、とんでもなく異常で魅力的な武将のオンパレードの時代だったのだと思う。
 本書には実はもう一つのボーナス的サプライズがあった。あとがきで黒田先生は足利成氏について「私が次に取り組むべき課題」と驚くべき宣言を書かれていたことだ。自分を鎌倉府の沼地に引きずり込んでくれた成氏についての研究の進展と成果公開の時代が間も無くやってくるということで、たいへん大きな楽しみができたことを感じた。
[2020.01.15(Wed) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 道南十二館についての数少ない成書 

2019年12月10日 ()
1711011.jpg『道南十二館の謎』 木村裕俊著
     北海道出版企画センター 2017年 3800円

 道南十二館は、北海道道南に点在する代表的な中世城館の総称ですが、広く知られているとは言えないと思います。

 本書は400ページを超える大著なのですが、残念に思うのは系図以外の図版が20枚ほどと少ない事です。道南中世史ということであればまだしも、道南十二館と銘打ったからには、読者は城館についての現代的な記述を期待してしまうのは自然でしょう。著者ご自身が踏査図を描かれないにしても、八巻孝夫さんが『図説中世城郭事典 第一巻』で描かれた縄張図や、これまでの調査報告書の図版などがあるわけですから、それらを利用し掲載されなかったことをとても残念に思います。複雑でかつ一般になじみの少ない地域について、言葉の力だけで十分な理解とイメージ惹起を求めるのはなかなか難しいことと感じるからです。
[2019.12.10(Tue) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 顕定とその時代の知識を持ってから読むべき本かも 

2019年11月20日 ()
1911112.jpg中世武士選書24
『上杉顕定 古河公方との対立と関東の大乱』 森田真一著
           戎光祥出版 2014年 2500円

 享徳の乱、長享の乱、永正の乱と立て続けに起こる戦乱で、関東はズブズブの戦国時代へ嵌まり込んでいく。享徳の乱勃発の年に生まれ、3つの大乱の時代を関東管領として采配を振るった上杉顕定の生き方・働きを知りたくて読み始めたのだが、顕定以外の人物と比較して顕定の存在感が希薄で、残念ながらその人物像を掴むことはできなかった。享徳の乱の流れは若干知っているつもりだったが、第1部の「享徳の乱と山内上杉氏」を読んでこれまでの知識が深まるとか整理されるといった感想は持てなかった。第2部「長享の乱と上杉一族」も、顕定の兄で越後上杉家当主定昌の死の項など何が言いたいのか分からない箇所が散見された。第4部「永正の乱と越後」の越後介入あたりから漸く顕定の姿が見えて来たのだが、そのときには命の残りはわずかになっている。長森原での最期はあっけない上に、永正の乱のその後について一言も無いのは不親切ではないだろうか。系図が細切れなので各人の相関関係を掴むのに他書を開きながら読むことを強いられる。せめて足利氏、上杉氏、長尾氏についてはそれぞれの系図を載せて欲しい。第3部「上杉顕定の権力」は、顕定の生涯を通観するには脇道なので、終いまで目を通した後に読み返した。ここでも顕定は影が薄く「山内上杉氏の権力基盤」というタイトルがふさわしいと思うが、ともかくこの本の真価はこの部分にあることを感じた。顕定の花押の変遷、上杉一族の庶家、長尾氏他の家臣団、上野・伊豆・武蔵などの守護分国と守護領についてまとめられている。現在の自分にはこれらの内容を有効に利用できる能力はないが、代わりになる本を見つけるのは難しいと思われる。本書は一般書と専門書の中間に位置するなかなか個性的な本だと言えるだろう。

以上の感想は自分の知識や理解力が乏しいことが原因かもしれないので、この領域に詳しい読者は全く違う感想を持たれるかもしれない。
[2019.11.20(Wed) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 「恩賞給付システム」に続き「戦功覚書」の世界 

2019年10月05日 ()
1909072.jpg戎光祥選書ソレイユ006
『戦国武士の履歴書――「戦功覚書」の世界』
     竹井英文著 戎光祥出版 2019年 1800円

 本書は、これまでにも埋もれていた文献を発掘し、新解釈を世に問い話題を提供してくれている我らがアイドル竹井英文先生のこの秋の新刊書です。近年の新出史料「里見吉政戦功覚書」を解読した内容ということで、きっと今回も読みやすくて、戦国人が生き生きと蘇ってくる内容なのだろうと期待できます。同じシリーズ005番の、松本一夫著『中世武士の勤務評定――南北朝期の軍事行動と恩賞給付システム』と合わせて読むと面白そうです。本が届いたら改めて紹介したいと思っています。
[2019.10.05(Sat) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 中世の善哉公社 武士の恩賞給付システム 

2019年09月20日 ()
1908221.jpg戎光祥選書ソレイユ005
『中世武士の勤務評定』 松本一夫著
            戎光祥出版 2019年 1800円

本書の構成は、
 第一部 参陣から恩賞給付までの流れ
 第二部 軍勢催促・軍功認定・恩賞給付の再検討
 第三部 南北朝期の戦闘の実像に迫る
となっている。

第一部では、参陣から恩賞給付までにどのような書類が交わされるかを順を追って解説している。
  軍勢催促状を受け取る
  着到状提出→着到帳記載→承認を受けた着到状返却
  軍忠状提出→承認を受けた軍忠状返却
  挙状
  感状
  申状
  充行状
という書類上の手続きが必要になるようだ。軍功認定の手続きのために官僚システムが作られて、恩賞のためとはいえ手続きを辿っていく面倒くささに辟易してしまったことだろう。落語の善哉公社を思い出してしまう。
また、ウモさんの名曲「境目哀歌」の3番に、
   俺にかかわり無い軍 先方衆をやらされて
   敵の鉄砲で傷負った 兵も沢山失った
     だのによ恩賞は 感状一枚これっきり
     やってられない やってられない 境目の領主
という歌詞がある。感状を出してもらえるまでも長かっただろうが、その後、所領を手に入れるにはまだまだ道は険しそうだ。

第三部では、兵糧、武器と戦闘形態、石、切岸合戦、堀の埋め方、分捕切葉、旗差、野伏、忍者、生虜、陣所、南北朝期の城郭、文書管理、武家の女性の役割、神仏への信仰などについて、短い解説ではあるが面白い内容になっている。

全編を通じて一次史料に基づいた解説になってるので、思い込みを修正して実態が見えてくると思う。
[2019.09.20(Fri) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 美浦と周辺地域の中世史講義録の完成 

2019年09月15日 ()
1909091.jpg平成28年度歴史講座講義録
『史料で探る美浦の中世史』
          美浦村教育委員会 2019年 1500円

 2年前の2017年1月から3月にかけて、美浦村文化財センターで行われた、平田満男先生による3回連続の講義録が完成しました。
  第一講 信太庄を中心に  (17年1月29日)
  第二講 土岐原氏を中心に (17年2月12日)
  第三講 神社寺院を中心に (17年3月5日)

 平田先生は土岐原氏研究の第一人者であるばかりでなく、稲敷地域を中心に各時代の歴史、民俗などに造詣が深く、いかなる疑問にも立ちどころに解決の糸口をいただける、まさにこの地域の生き字引と言える存在です。先生に初めてお会いしたのは、まだお城歩きを始めたばかりの頃で、江戸崎城の場所を聞きに江戸崎町生涯学習課を訪ねた2000年10月16日でした。アポなしの飛び込みにもかかわらず、江戸崎城と土岐原氏と周辺地域の戦国史について1時間以上に渡って詳しく説明をしてくださいました(初めて聞くことばかりだったのでほとんど忘れてしまったのは残念)。それ以来、『図説 茨城の城郭』をはじめ、さまざまの機会でお世話になっています。先生は気さくでお話好きなので、これまでにも機会あるごとにさまざまな話題についてたくさんのお話をしてくださいましたが、いずれもその場で聞いてそれきりになっていることを残念に思っていました。今回、先生の頭の中にある膨大な知識の一部だとしても、連続講義の内容が冊子としてまとめられ、多くの人の目に触れる形になったのは画期的なことだと思います。美浦村文化財センターで購入可能ですので、ご興味ある方は問い合わせてみてください。
  →美浦村文化財センター
      所在地:〒300-0404 茨城県稲敷郡美浦村大字土浦2359
      電 話:029-886-0291
[2019.09.15(Sun) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 新刊書『常陸大掾氏と中世後期の東国』 

2019年09月10日 ()
1909071.jpg『常陸大掾氏と中世後期の東国』戦国史研究叢書19
     中根正人著 岩田書院 2019年 7900円

  →岩田書院ホームページ

 『続・図説 茨城の城郭』以来、茨城県中世城館跡総合調査委員会その他でお世話になっている中根正人さんの論文集が8月に刊行されました。これまで、論文雑誌や共著書などに収められた重要論文に加え、多数の新稿(*印)を加えた構成になっています。近年、県北を中心とした佐竹氏関連研究に勢いを感じる一方で、めざましい進展に乏しい感のある県南の中世史ですが、名族大掾氏を中心に据え、周囲の諸勢力との関係に目を配っている本書は、高橋修編『常陸平氏』(戎光祥)を補い発展させ、今後の関東中世史研究に於ける存在感を確立していくと感じられます。

目次
序 章 中世後期常陸諸氏研究の現状と本書の構成(*)
第一部 十四から十五世紀の常陸大掾氏
 第一章 中世前期常陸大掾氏の代替わりと系図
 第二章 大掾浄永発給文書に関する一考察ー観応の擾乱期の常陸ー
 第三章 南北朝〜室町前期の常陸大掾氏
 第四章 室町中期の常陸大掾氏
 補論一 「平憲国」再考(*)
第二部 十六世紀の常陸大掾氏とその周辺
 第一章 戦国初期の常陸南部ー小田氏の動向を中心としてー(*)
 補論二 戦国初期の大掾氏ー大掾忠幹の発給文書からー(*)
 第二章 戦国期常陸大掾の位置づけ
 第三章 大掾清幹発給文書の検討ー花押形の変遷を中心にー(*)
 第四章 「南方三十三館」謀殺事件考
 補論三 島清興書状にみる天正十八年の大掾氏と豊臣政権(*)
第三部 中世後期の常陸の諸勢力
 第一章 室町期の常陸小栗氏(*)
 第二章 古河公方御連枝足利基頼の動向
 第三章 十六世紀前半の常陸真壁氏(*)
 終 章 中世後期の常陸大掾氏と常陸国(*)
初出一覧
あとがき
索引
[2019.09.10(Tue) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 『図説 鎌倉府 ー構造・権力・合戦』 

2019年08月18日 ()
1908082.jpg『図説 鎌倉府 ー構造・権力・合戦』 杉山一弥編著
                戎光祥出版 2019年 1800円

 鎌倉府は関東中世史、戦国史を見るときの要であるが、その構造、権力関係、歴史は複雑でややこしい。それ故どこから手をつけようかと立ち止まってしまうが、本書はコンパクトな構成で全体を掴みやすくなっている。各項目の記述は短いのでこれだけでは詳細まではわからないが、他書を読むときの副読本としても便利だと思う。
[2019.08.18(Sun) 00:31] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 雨谷昭編修『土浦関係中世史料集』完結  

2019年04月30日 ()
1904301.jpg『土浦関係中世史料集 上巻』 2015年
『土浦関係中世史料集 下巻』 2019年
  雨谷昭編修 土浦市立博物館 各巻2000円

 雨谷昭先生が収集・編修された、『土浦関係中世史料集』上・下巻が完結しました。収録されていないのを残念に感じる周辺地域の文書もありますが、「土浦関係」に絞って集めたという意義は大きいと思います。自分の様な文書の読めない者にとっては、ここに収録した667本だけでもとりあえず目を通しなさいと言われている様に感じられました。

土浦市立博物館:土浦市史資料集『土浦関係中世史料集 下巻』を販売しています
[2019.04.30(Tue) 20:45] 本のご案内Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 関東戦国全史~関東から始まった戦国150年戦争 

2019年03月02日 ()
1809271.jpg『関東戦国全史~関東から始まった戦国150年戦争』
       山田邦明編 洋泉社 2018年 950円

第I部 足利氏と上杉氏の時代
第II部 台頭する北条氏と足利・上杉との角遂
第III部 北条氏と諸勢力との軋轢
第IV部 北条諸国の解体と関東戦国の終焉

 永享の乱、結城合戦、嘉吉の乱は一言で済まし、享徳の乱の直接の原因になった江の島合戦あたりからいよいよ関東150年戦争が始まる。足利、上杉、北条に加えて、常陸、下野、房総の諸勢力の動向にも満遍なく目が配られているが、それゆえに、登場人物というか登場氏族の数が膨大で、数回読み返して分かったつもりになっても、数日すると記憶がリセットされてしまうかのようだ。新書版故の制約ではあるが、巻末の、関連地図、年表、参考文献のページは、字が小さくて老眼には読むのが辛い。ともかく、小型本の中によくこれだけ詰め込んだものだと感じる。関東戦国史の一通りの流れが分かっている場合には、ハンドブック的な使い方が便利なのではないだろうか。
[2019.03.02(Sat) 23:13] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 分国法 

2018年11月15日 ()
1810282.jpg『戦国大名と分国法』 清水克行著 岩波新書 2018年 820円

 戦国大名たちは決して独裁者だったわけではなく、様々なしがらみに苦労していたことがわかる。結城、伊達、六角、今川、武田の分国法を解説。
[2018.11.15(Thu) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 竹井英文さんの新著 『戦国の城の一生 つくる・壊す・蘇る』 

2018年09月29日 ()
1809191.jpg『戦国の城の一生 つくる・壊す・蘇る』 竹井英文著
            吉川弘文館 1700円 2018年

 城がいつ誰によって作られたのかというエピソードや華々しく戦った時代についてはこれまでも語られる機会が多かったが、放棄されたり破却されて使われなくなった城や、さらにその後に取り立てられ再利用される城といった、一つの城の一生を辿ることは余程有名な城でなければなかなか難しいことだと感じる。現在私たちの眼の前にある城郭遺構も、築城され、利用され、破却され、廃城となり、古城として記憶の中に残り、再度取り立てられ、再度利用され、再度破却され、再度廃城となり、再度古城として記憶の中に残り、あるいはそれすらも記憶の中から忘れ去られ、、、。そうした城の一生のイメージを頭に置くことで、城として機能していないために記録や文書も残りにくい時期などについても想像力を駆使できる余地が生まれてくるのではないだろうか。本書を読んで、地元に残る、「臼田文書」の江戸崎城開城の一節も現実の光景として蘇ってくるように感じられた。
 文献史学の専門家らしく、さまざまな文書や記録を証拠として揚げながら、並行して現場を踏査される竹井さんらしい、リアリティのあるとても軽快で読みやすい内容の本になっている。
[2018.09.29(Sat) 20:15] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 上総・安房の中世城郭32城を詳述 

2018年08月21日 ()
1808201.jpg『房総里見氏の城郭と合戦』 小高春雄著 戎光祥出版
                  2600円 2018年

 千葉城郭研究会の小高春雄さんの最新著作が刊行された。小高さんは、文化財担当職員としての調査に止まらず、ご自分の時間も周辺地域の城郭調査に費やされ、1991年の『長生の城』以来7冊の調査報告書を自費出版されてきた。本書はそれらの集大成となる内容だとご本人のあとがきにある様に、取り上げられている城郭は32城と多くは無いが、安房、上総地域の重要な中世城郭について詳細に解説がされている。特に、巻頭の総論「里見・正木氏の城郭の特質と変遷」は、地域外の者が房総の歴史を概観するのにもありがたい章になっている。
[2018.08.21(Tue) 13:20] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 山川菊栄が幕末の水戸藩を活写する名著 

2018年02月09日 ()
読みたい本がたくさん有り過ぎてなかなか追いつかないにもかかわらず、山川菊栄の名著といわれる2冊を購入。

1802021.jpg『武家の女性』山川菊栄著 岩波文庫 岩波書店
              1983年 620円
 けむしさんのラジオ番組FMだいご「お城にGO〜」の第4回放送で、節句をキーワードに近世の武家の生活を解説していたゲストの辻川牧子さんが番組の最後に紹介していたので買ってみました。著者の山川菊栄は女性解放運動の先駆者の一人ということは知っていましたが今回はじめて著書を読んでみました。本書は1856年(安政4)生まれの母から直接聞いた思い出話を主として、1819年(文政2)生まれの水戸藩下級武士であった祖父の残した記録や親類などからの聞き書きをまとめたものです。『武家の女性』というタイトルではありますが女性だけでなく、幕末の武家を取り巻く様々な階級の人々の日常がいきいきとまたほのぼのとしたユーモアを交えて描かれていて、これまで読まなかったことが後悔される程の、読みやすく、かつ実に楽しい書でした。加えて、天狗党の乱とその後維新後までも続く抗争についての無慈悲で凄惨な様子も詳しく描写されています。話の流れの本筋ではないのですが、自分に知識が乏しい着物に関する部分を特に確認しながら読むのも興味深いものでした。この書も以下の書も菊栄の母の記憶を元にした聞き書ということで、「時代の空気を感じるにはよい本ですが、正確な記述でない部分が多いです」というご指摘もいただきました。そのことを踏まえた上で、岩波文庫で180頁ほどの薄いものなので、水戸藩、茨城の幕末、武家民俗、などに興味を持つ方々には一読をお勧めしたいものです。

『覚書 幕末の水戸藩』山川菊栄著 岩波文庫
         岩波書店 1991年 1100円
 こちらはついでに買ったのですが、『武家の女性』が母千世からの聞き書きを主体にしたのに対して、本書は祖父延寿の書き残した記録や古老からの聞き書きを主体にしたものなのでしょう。引き続き読んでみようと思います。
[2018.02.09(Fri) 20:59] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 『北海道道南の陣屋と台場 [改訂版]』好評につき増刷しました  

2018年01月21日 ()
1710281.png昨年の11月18日の記事で、自費出版しました拙著 『北海道道南の陣屋と台場 [改訂版]』についてご案内をいたしました。多くの方々のご協力のおかげをもちまして、予想以上のお問い合わせをいただけて一旦在庫が無くなりましたが、この度増刷が完了しました。お問い合わせのほど、引き続きよろしくお願いいたします。
(このブログの右側カラム上からサンプルページをご覧いただけます)
[2018.01.21(Sun) 11:20] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 『北海道道南の陣屋と台場 [改訂版]』 

2017年11月18日 ()
1710281.pngすでにご案内済みですが『北海道道南の陣屋と台場 [改訂版]』が完成しました。試作版だった初版に比べると、全面的にパワーアップ、バージョンアップしました(と思います)。内容は北海道の道南地方に限定ですが、茨城県に縁のある佐竹氏の陣屋なども取り上げてみました。その他、一般書や観光案内には書かれることの少ない情報もありますので、函館旅行をされるお城ファンのみなさまのお役にたつはずです。
 →サンプルページ

ご興味ある方はメールkopyto*mac.comへお問い合わせください(*を半角@へ変える)。
[2017.11.18(Sat) 20:29] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 80箇所以上の陣屋と台場を紹介 『北海道道南の陣屋と台場』 

2017年09月23日 ()
1709092.jpg先日ご紹介した『北海道道南の陣屋と台場』には、右図に示した80箇所の他に、今後の調査の参考用として未確認台場についても掲載してあります。

現在、ほぼ全面改訂中で、この版からは送料込みで1500円でお分けできる予定です。ご興味ある方はメール(kopyto★mac.comの★を半角@へ変えて)でお知らせください。
[2017.09.23(Sat) 00:00] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(2) 見る▼
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COMMENT

改訂版 拝受 by とら
郵送、ありがとうございました。受け取りました。熱心ですね。更なる進展、期待します。

by ひづめ
飽きっぽい性格なのでやる気になっている時にやってしまわないと機を逸してしまうので。
試作版は破棄してくださって結構です。

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リストマーク 北海道道南の陣屋と台場についての散策記録集を制作中 

2017年09月09日 ()
1709091.jpg『北海道道南の陣屋と台場』 2017年 

1997年から2007年まで、出張時の休日と夏期休暇を使って歩き回った北海道道南の史跡の中から、幕末の陣屋と台場だけを集めた冊子を作ってみた。初版は少部数のみ製本して道南の知人に目を通していただいている。ご指摘に加えて新情報や新資料といった貴重な情報を頂いたので、それらを参考になるべく早く改訂版を作る予定だ。そしてご希望の方にはなるべく安くお譲りできるようにと考えている。A4版106ページ。
[2017.09.09(Sat) 08:39] 本のご案内 | Trackback(-) | Comments(0) 見る▼
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