「平将門の乱」について読み始める
2020年07月11日 (土)

最近ちょっとしたきっかけがあって、もう少し具体的な将門の乱と将門像を知りたいと思って本を読み始めたところへ届いた将門煎餅。というのは逆で、将門について考える機会を与えてくれたのは、この品の送り主で『図説 茨城の城郭』の熱烈な読者の方だ。
いただいた将門煎餅を食べながら将門の本を読んでいるのだが、人物関係や事件の関連がなかなか頭に入ってこない。そんな折、NHKオンデマンドで『風と雲と虹と』総集編(前編・後編)が見られるようになっているので、これも見ながら本を読んでいる。
平将門について勉強するきっかけは、将門は平凡な開発領主だったのか?という問いについての答えを得たいからだ。将門の乱は、国衙の占拠や新皇宣言が示すように関東限定とはいえ律令国家を維持してきたシステムが奪取され、貴族社会を恐怖のどん底に落とし込んだ大事件だった。それは、武士の起こりとか、律令制の崩壊とか、荘園の始まりなどの日本史的大問題と直結している。将門の乱が分かりにくいのは、史料が少ないことに加えて、舞台となった地域の当時の地勢、戦国時代の知識をベースにできない様々な社会システム、そしてその大きな変動時期であることなどが絡んでいて、単に事件の経過を追っていくだけではわからないことだらけだからだと思う。
この機会に何冊か選んだ次のような本を読んで、将門の時代を見ていきたいと思っている。

『中世関東の内海世界』 鈴木哲雄著 岩田書院
2005年 3000円
今回購入したものではないが、香取の内海論の先駆的研究者が、将門の乱の舞台を水上交通路の視点から記述している論文が含まれている。

2006年 2700円
「将門記」の現代語対訳本。これはサブテキストとして買っておいた。

『平将門の乱』 川尻秋生著 吉川弘文館
2007年 2500円
若干古い本だが、現在でも将門の乱について手軽に読める、最もよくまとまっている本の一つらしい。最初にこの本をから始めるのがスタンダードかもしれない。

『常陸平氏』 高橋修編著 戎光祥出版
2015年 6500円
巻頭の「総論 常陸平氏成立史研究の現在」は、これまでの常陸平氏についての研究史が手際よくまとめられていて、その導入部分が将門に関わる内容になっている。他の本よりも前に読んで概観し、他の本を読みながら確認し、他の本を読み終わってからまとめ的に読んでみるといいかもしれない。本書も、今回のために購入したものではなかったが、思いがけず良い本を所有していた。

『平将門の乱を読み解く』 木村茂光著 吉川弘文館
2019年 1800円
今回将門について知りたくなって、最初に手に取ったのがこの本。本書で明らかにしたい5つの論点がプロローグに挙げられているのだが、一族内紛の経過があっさりし過ぎだし、営所が陸奥ともつながる水陸の交通の要所であること、八幡神と道真の登場、王土王民思想の指摘も受領国司への権力集中政策と言い換えられるし、大体は川尻氏の本で述べられているように感じる。ただ、冥界消息については、確かに本書が力を入れた部分だと思われる。ただ、将門の営所があったと言われる坂東市岩井の場所を終始千葉県と勘違いされていたり、筑波周辺の場所の位置関係や方位関係を誤って記述されたりしているのはいただけない。
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