北条義時本を選ぶなら 『鎌倉殿の13人』の参考書
2022年01月30日 (日)

小学館 2021年 1300円
2021年末には北条義時本も大方出揃い、翌2022年の年明けからNHK大河『鎌倉殿の13人』がスタートした。義時の名を冠した書籍を持っていなかったので、まずは新進気鋭の研究者である山本みなみ氏の本書から読んでみたのでその感想を書いておこう。
多くの義時本の中から、最初に本書を手にできたのはおそらく幸運だったのだろう。どこでそう感じたかと言えば、根拠となる史料を挙げて踏み込んだ記述をしてあり、一般向けの概説本でありながら高い満足感を得られたからだ。記述の流れは、研究史の紹介→現時点での理解→新史料紹介→新たな解釈という手順を取っているのも論理的で好感を持った。これまでに耳にしていた内容は、これこれの研究成果の積み重ねで成り立っていたのかと理解できたし、さらに本書で紹介される新史料によって補足されたり新たな解釈の提案がされることもあり、知的な楽しさを味わうことができた。最終章で改めて同時代から近代までの義時評価の変遷を史料を挙げて流れを追って記述されていたが、これまで一般書ではあまり見たことがない構成ではないだろうか。
強いて希望を付け加えるならば、義時あるいは北条氏を中心にした系図(あるいは相関図)、および略年表などが掲載されていれば、本書だけでなく他書を読むときにも本書を手に取る機会が増えてより参考書としての使い勝手が高まったのではないかと感じた。それはともかくとして、とにかくとても良い本でおすすめの一冊だ。
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